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人工呼吸器(非侵襲的陽圧換気/NPPV)モードや合併症・離脱について

人工呼吸器といってもいろんな種類があります。大きく分けると、侵襲的陽圧換気と非侵襲的陽圧換気です。文字通り侵襲があるかないかの違いですが、もっと詳しく知りたいですよね。

そこで今回は、人工呼吸器(非侵襲的陽圧呼吸/NPPV)について勉強していきましょう。

 

NPPVって何?

人工呼吸器とは何か、人工呼吸器の目的などは、人工呼吸器の項目1を参照してください。

今回はNPPVについてなんですね。早速NPPVを使っている人がいたのでしっかり勉強していきます。

働いている科にもよりますが、呼吸器の病棟やICUなどだったら早い段階でNPPVを目にするでしょうね。

この間はIPPVについてでしたけど、NPPVとの違いは分かりますか?

えっと、私がみたNPPVはマスクを使ってました。前、勉強したIPPVは挿管して人工呼吸器を装着していたから・・・そこが違うと思います。

そうですね、NPPV(non-invasive positive pressure ventilation)つまり非侵襲的陽圧呼吸は挿管と違って侵襲的なことはせずに、マスクを介して陽圧呼吸を行うものです。

IPPVの時は確か鎮静剤や鎮痛剤を使用していましたが、NPPVの患者さんはそれらしきものは使っていませんでした。

そこまでしっかり見れるようになったんですね。では、次はNPPVについて詳しくみていきましょう。

NPPVとは

NPPVとは、気管挿管や気管切開をせずに、マスク装着だけで一定の圧力や決められた量の空気を肺に送る人工呼吸器のことをいいます。

NPPV装置には、BiPAP VisionやV60などがあります。

 

IPPVとNPPVの違いは?

IPPVとNPPVの違い違い1

NPPVの適応基準

  • 1.マスクの装着の必要性を十分に納得し、受け入れることができる
  • 2.咳嗽反射と咳嗽力があり、喀痰を自力で喀出できる
  • 3.高いFiO2や高い気道内圧を必要としない
  • 4.咽喉頭反射が保たれており、誤嚥の危険性がない
  • 5.消化管出血やイレウスがない
  • 6.循環動態が不安定でない
  • 7.呼吸中枢に問題がなく、自発呼吸がある
  • 8.睡眠時無呼吸などのように、マスクで解消可能な気道閉塞が主病態である
  • 9.原疾患の治療を並行して行い、早期に解決できる見込みがある

が適応となっています。

一方、適応外の基準としては

  • 1.自発呼吸が停止
  • 2.循環動態が不安定
  • 3.誤嚥の可能性が高い
  • 4.意識障害や協力が得られない
  • 5.顔面や鼻腔内の外傷や火傷
  • 6.気道確保が困難
  • 7.痰の量が多く、自己にて喀出できない

があります。

NPPVはマスクを装着し、呼吸管理するため自発呼吸があることは大前提です。

マスクから空気を送るため、誤嚥のリスクがあがったり、顔などに重症のケガがあれば、マスクを装着することはできなくなります。

 

NPPVの対象疾患

高炭酸ガス血症を伴う呼吸不全:慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪、喘息の重積発作、睡眠時無呼吸症候群

低酸素血症を伴う呼吸不全:急性心原性肺水腫、慢性心不全の急性増悪、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、外傷に伴う呼吸障害、無気肺

呼吸筋疲労に伴う換気不全:肺炎、慢性呼吸不全患者、神経筋障害

その他:抜管後の呼吸障害、呼吸器離脱困難

 

NPPVの長所

  • 気管挿管や気管切開など侵襲的なことはしなくてよい
  • 食事や会話が可能:栄養摂取ができ、ストレスも軽減する
  • 感染の危険性が軽減:チューブを使用している訳ではないので感染源が少ない
  • 装着、中断、離脱が容易にできる
  • 鎮静剤の量を減らせる:肝障害や長官麻痺などの心配がない

NPPVの短所

  • 気道と食道を同時に送気してしまう:呑気や誤嚥が起こる
  • 高い気道内圧がかけられない:肺が硬ければ挿管が必要
  • 患者の協力が必要:不穏患者だと困難
  • 皮膚障害が起きやすい:マスクの圧迫により、潰瘍ができてしまう
  • 気道確保はできない

呑気(どんき)とは、大量の空気を呑み込むことによって、胃や食道、腸に空気がたまり、引き起こされる症状のことです。その結果、ゲップや腹部膨満感、ガスなどだけでなく、胸焼けや上腹部痛などの症状がみられることもあります。

NPPVのモードは?

BiPAPでよく使われるモードには

・S/Tモード

・CPAP

があります。

 

S/Tモード(spontaneous/timed)

Sモード:自発呼吸を検出してIPAP、EPAPを供給する

Tモード:あらかじめ設定した呼吸サイクル時間内に自発呼吸が検出されなかった場合、自動的にIPAPが供給されるバックアップ機能

この二つのモードを組み合わせたものをS/Tモードと言います。

このモードは、患者が自発呼吸を行っている場合、患者の吸気時に合わせて設定した陽圧(IPAP値)までガスを送気し換気を補助してくれます。

自発呼吸が少ない場合は、設定した呼吸回数と吸気時間でPS(IPAP−EPAP)を強制的に送気し、換気を補助します。

呼気時は、EPAP値(=PEEP)の圧力がかかるため、肺胞虚脱がなくなるので酸素化が改善されます。

 

S/Tモードで呼吸回数10回/分で設定されている場合

1分間を呼吸回数で割ると(60秒÷10回)吸気と呼気合わせた1呼吸は6秒となります。つまり呼吸サイクルが6秒ということです。

⇒6秒に1回の呼吸を検知しなければ、バックアップとして設定した呼吸回数と吸気時間でPSを送気し、換気を補助します。

※自発呼吸が設定呼吸回数以上であれば、Tモードのバックアップ換気は行われません。

メモ

IPAP:吸気時にかかる陽圧

EPAP:呼気時にかかる陽圧(=PEEP)

IPAP−EPAP=PS
適応患者

●高炭酸ガス血症のリスクのある患者
(COPDや肺結核後遺症などの急性増悪、低酸素血症・高炭酸ガス血症が混在している場合など)

観察ポイント

●気道内圧
●換気量(TV、MV)
●呼吸回数</strong
●呼吸のリズム

 

CPAPモード(continuous positive airway pressure:持続的気道陽圧)

CPAPモードとは、自発呼吸にPEEPを加えた換気モードです。最も生理的であり、胸腔内圧の上昇が比較的小さいため、循環抑制が軽減されます。

吸気から呼気の呼吸全相にわたって気道内圧が陽圧に維持されています。主に酸素化の改善(PaO2)を期待して使われます。

 

適応患者

●自発呼吸があることが大前提
●換気量は確保できているが、酸素化が不十分である
●酸素療法に反応しない低酸素血症(肺胞虚脱や肺水腫など)
●睡眠時無呼吸症候群(SAS)
●人工呼吸器からの離脱(ウィニング)の前段階

 

観察ポイント

●一回換気量が十分か
●呼吸が不安定ではないか
●呼吸回数は正常値内か(無呼吸や頻呼吸はないか)

 

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NPPVの合併症は?

NPPVも機械なので、やはり合併症が生じてきます。合併症とそれに対する対処法をみていきましょう。

皮膚トラブル

NPPVでは、常にマスクを着用しているので、特に鼻根部や前額部が圧迫され、皮膚損傷や褥瘡などの皮膚トラブルが起こってしまうことがあります。

リーク漏れを防ごうときつく締めすぎてしまうことが原因です。リークはだいたい50L/分であれば許容範囲なので、リークを見ながらマスクのきつさを調整しましょう。

対策

  • マスクのサイズが合っているか確認する
  • マスクはきつく締めすぎない
  • 皮膚保護材(デュオアクティブET・CGFなど)を使用する
  • 顔の清拭や洗顔を定期的に行い、皮膚の清潔に務める
  • 可能な範囲でマスクをゆるめ、皮膚の観察や圧迫解除をする

 

口腔・鼻腔内の乾燥

NPPVは、マスクから大量の空気が送られているため、口腔や鼻腔内に乾燥が生じるのは避けられません。乾燥すれば、皮膚トラブルにもつながりますし、口臭や感染源にもなってしまいます。

対策

  • 口腔ケアや含嗽をしっかりし、潤わす
  • 口腔内ジェルなど保湿剤を使用する
  • 加温加湿器を使用する

 

NPPVでは、送気による乾燥を防ぐため,加温・加湿はしっかりと行う必要があります。加湿はマスクがくもる程度にすることが推奨されています。

蒸留水の減りも観察し、常に加温加湿がかかるようにしておきましょう。

 

結膜の乾燥

結膜の乾燥は、鼻根部などからのリークにより気流が目に当たってしまうことで生じてしまいます。ドライアイのようになってしまい、乾燥すると眼は乾いて傷つきやすい状態になってしまいます。

対策

  • 加温加湿器の加温加湿レベルを検討する
  • マスクからのリークの確認
  • マスクの種類やサイズを再検討する
  • 点眼をする

 

腹部膨満

口から空気を送気するため、胃に空気が入り込み腹部膨満が生じてしまいます。

対策

  • 胃管を挿入し、脱気する
  • 設定圧の変更を検討する

 

圧迫・不快感

意識がある場合に使用するもので、大量の空気が送り込まれるものなので、必ず不快感はついてきます。マスクフィッティングをしなければならず、しっかりとした固定もするのでマスク自体の圧迫感もでてきます。

対策

  • マスクを強く締めすぎない
  • マスクの種類やサイズを検討する
  • 圧が高く不快がある場合も多いので、設定圧の変更も検討する

そのほか人工呼吸器を使用することで、全身へもたらす影響についてはこちらの項目4を参照してください。

 

マスクの種類

マスクにも種類があるので、患者さんの合わせたものを使用しましょう。

●トータルフェイスマスク

トータルフェイス http://www.philips.co.jp/healthcare/product/HCNOCTN112/respironics-total-face-mask出典

 

●コンフォートジェルブルーフェイスマスク

コンフォートジェルhttps://www.kango-roo.com/sn/k/view/1601出典

マスクの選択方法

・口回りにフィットするもの

・睡眠中に口が開いても唇がはみださないもの

・目にあたらないもの

・鼻孔がはさまったり、閉塞しないもの

・リーク量が適量になるもの

を選びましょう。

 

 

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NPPVからの離脱は?

急性呼吸不全に対しては気管内挿管による人工呼吸器からの離脱と変わりありません。

1つの離脱基準としては、

●EPAP=4cmH2O
●IPAP≦6cmH2OかつFiO2≦0.3でSpO2≧97%
●呼吸回数≦30回/min
●脈拍数≦100回/min
●マスク装着を嫌がる

以上の条件を満たす場合は、酸素マスクに変えてSpO2=97〜99%を維持するように酸素濃度を調整します。

また、患者さん自身がNPPVに対し、不快が出現すれば、有効な換気ができず、酸素化も悪くなってしまうので、その場合は中止せざるを得ません。

NPPVからの離脱の場合、人工呼吸器の着脱を繰り返し、自発呼吸の時間を徐々に増やすon-off方法を用います。

NPPVを外し、酸素マスクにする時間を設け、それを日々長くしていき、最後には完全に離脱するといった方法がよくとられます。

NPPVのウィーニングは、容易にできますが、マスクを外すということは陽圧換気がなくなり、自分の力で呼吸をしなければなりません。

ウィーニング時はバイタルサインや呼吸状態の観察は必須です。

 

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まとめ

挿管している方よりは比較的よくみるNPPV。だからこそ、しっかり勉強し受け持ちに臨みたいですね。人工呼吸器(IPPV)や人工呼吸器からのウィーニング・離脱については以下の記事を参照してください。

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