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気管切開の看護は?合併症やメリット・デメリットについて

こんな経験ありませんか?

「就職してから、首からチューブがでていて人工呼吸器がつながっていた。」

私は正直初めてこの場面を目にした時は衝撃的でした。人工呼吸器は口からというイメージがあったので、とてもびっくりしたのを覚えています。看護師の私がびっくりするのだから、家族の方はもっとびっくりするのではないかと思います。そこで、今回は「気管切開」について勉強していきましょう。

 

気管切開とは

気管切開とは、気管とその上部の皮膚を切開してその部分から気管にカニューレを挿入する気道確保方法です。

呼吸は肺で行いますよね。しかし、息を吸ったり吐いたりするには肺までの空気の通り道が必要になります。

上気道(鼻腔・咽頭・喉頭)、下気道(気管、気管支)が空気の通り道になりますが、なんらかの病気や異物などが原因でどこかしらが閉塞(ふさがってしまう)と、空気は通れず、呼吸ができない状態になります。

呼吸ができないと、脳や全身に酸素が送れず、危険な状態になってしまいます。そこで、空気が送れるように気管に直接穴を開け、酸素を投与したり、人工呼吸器を使用して空気の通り道を確保するといった方法が気管切開です。

 

気管切開は直接、気管に穴を開ける・・・口から管を入れる方法(気管挿管)とはどう違うんですか?

いい質問ですね。では次は気管挿管と気管切開の違いや、気管挿管の目的などについて詳しくみていきましょう。

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気管挿管と気管切開の違い

気管挿管は文字通り、”気管”に”管(チューブ)”を”挿入”することであり、口や鼻から気管内チューブを挿入する気道確保法の1つのことです。

そして、気管切開は先ほども述べましたが、気管とその上部の皮膚を切開してカニューレを挿入する気道確保法のことを指します。大きな違いは、これでお分かりいただけると思います。

基本的に、気管切開は体に穴を開けるといった手術になるので、体の負担は大きいです。そのため、場合によりますが、最初から気管切開をするといった方法はとられません。次は気管切開の目的や適応についてみていきましょう。

 

気管切開の目的

気管切開には大きく分けて、「気道閉塞の予防」、「下気道の分泌物貯留の予防」、「呼吸不全」の3つの目的があります。

  • ①気道閉塞の予防
気道が閉塞する原因としては、咽頭炎や扁桃炎などの咽頭の炎症(=炎症を起こし、喉が腫れる)、喘息発作による気道の狭窄や閉塞、顔や首の外傷などの様々な原因により、気管が閉塞した場合や閉塞の危険性がある場合に気管切開を行います。

 

  • ②下気道分泌物・貯留物の排除のため
なんらかの病気などが原因で意識がなくなってしまったり、重症筋無力症という病気が原因で、気管内に唾液や食物、痰などが気管内に貯まってしまう恐れがある場合に、それらの貯留物をとるために気管切開を行います。

 

  • ③呼吸不全の呼吸管理
肺炎や呼吸器の病気など、呼吸不全を発症した際に呼吸を管理する目的で気管切開が行われます。

呼吸不全はさまざまな病気により発症し、長期的な治療を必要となります。多くの場合はカニューレの留置が長期的に行われることになります。

 

気管切開の適応

  • ①気管内挿管による気道確保や人工呼吸管理が長期化した場合
長い間、口や鼻から気管にチューブを入れた状態が続くと、チューブによって組織が圧迫され、潰瘍ができたり、壊死してしまうといった可能性があります。

さらに、同じチューブを使用していると感染の危険性が高まってしまいます。そのため、交換が必要となりますが、気管挿管には高度の技術が必要だったり、リスクも伴うことです。

そういった理由で長期間気道確保や人工呼吸器管理が必要である場合は、気管切開を行います。この場合、いつ気管切開に移行するかですが、気管切開実施時期の参考となるようなエビデンスはまだ少ないのが現状です。

ある研究では、10日以降に気管切開を実施するより、4、5日以内に気管切開をする方が死亡率の減少、ICU滞在期間の短縮、鎮痛薬使用期間の短縮などといい結果がでているといった報告もされているようです。ただ、やはり、気管切開をするとなると体への負担などいろいろなことを踏まえると早期に気管切開をするといった方法をとることは少ないように思います。

私が働いていた病院は2週間が目安でそれ以降も人工呼吸器管理が必要であれば、気管切開をするといった方法がとられていました。

気管挿管によるメリット・デメリット、気管切開によるメリット・デメリット、家族、本人の意向も踏まえ、どの時期に気管切開をするのがいいのかが適当であるのか医師が考えるといったことなのでしょう。

 

  • ②気管内挿管では分泌物の吸引が困難な場合
口や鼻から長いチューブを使って痰などを吸引するのは実際とても難しいものです。鎮静薬を使ったりなどで、十分に咳がだせず、自分では痰をだせない状況なので、どうしても吸引という操作は必要になります。

痰や唾液をそのままにしておけば、誤嚥して肺炎になってしまったり、痰がつまって空気が送れなくなったりとトラブルが起きてしまいます。気管切開をすると、直接気管に穴を開けることになるので、吸引操作が楽になります。

 

  • ③上気道(鼻腔・咽頭・喉頭)閉塞の場合
のどの病気の場合、のどが狭くなったり、詰まってしまうと、口や鼻からチューブを通すことができなくなります。そういった場合は、気管挿管ができないので、気管切開を最初から行います

気管切開の目的・適応を踏まえた上で、まずは基本的に気管挿管(口からチューブをいれる方法)が選択されます。そして、期間や状況に応じて気管切開を行います。

初めから気管切開を行う場合は、気管挿管の方法がとれない場合です。理由は、体に与える負担が大きいことが挙げられます。

 

気管切開のメリット・デメリット

なんにでもメリット・デメリットがあるように気管切開にもメリット・デメリットが存在します。デメリットも踏まえ、気管切開の看護を行わなければいけません。

メリット

  • 気管内吸引がしやすい
  • カニューレの挿入・固定が容易
  • 口腔内が解放され、苦痛が軽減できる
  • 口からの食事が可能
  • 口腔内の清潔保持がしやすい
  • 声が出せる(場合によるが)
  • 口の動きが読みやすくなるのコミュニケーションがとれやすい
  • 鎮静薬・鎮痛薬が減らせる

看護師からしたら、特に吸引がしやすい、口腔ケアがしやすいという点が大きいのではないでしょうか。

ご家族の立場からしたら、口から入っていたチューブが原因でしんどうそうだったり、苦しそうだったりと感じていたことが気管切開になることで見た目がまず変わるので喜ばれることが多いです。患者さんからしたら、やはり口から入っていた異物がとれる訳ですからかなり苦痛は軽減できると思います。

また、気管挿管の場合は、鎮静薬を使っていますし、口からチューブが入っているのでどうしてもコミュニケーションがしづらくなります。しかし、気管切開であれば気管挿管の時よりコミュニケーションが容易になるのでストレスも軽減できるでしょう。

デメリット

  • 手術による体の負担が大きく、出血や感染などの可能性がある
  • 合併症の可能性がでてくる
  • 刺激によって気管が麻痺してしまう
  • 誤嚥の危険性がでてくる

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気管切開の合併症は?

気管切開のデメリットに合併症がでてくるとありますね。体に穴をあけた手術なので、合併症がでてきてしまいます。これも把握しておく必要があります。下記の合併症があることを頭にいれ、日々の看護をしていきましょう。

 

①出血、感染、皮下気腫

手術に伴い、早期に起こってくる合併症になります。患者に適したカニューレを選択することが大事になってきます。

また、感染防止のため消毒・ガーゼ交換も忘れてはいけません。ガーゼ交換の頻度は1日1回が目安です。もちろん、汚染や出血があればその都度交換しましょう。気管孔が不潔にならないように注意が必要です。

 

②気管カニューレの閉塞

分泌物や知の塊によってカニューレが閉塞しないように、十分な加湿と頻回の吸引が必要になります。

気道は加湿された状況となっていますが、気管切開を行うと直接空気が入るため、乾燥した状態になってしまいます。乾燥すると痰が硬くなり、痰が貯留する事により肺炎などの合併症を起こすリスクが高くなります。

人工呼吸器を使用していない患者さんは人工鼻などで加湿できるようにしましょう。室内が乾燥しないよう室温、湿度の環境を整えることも重要になります。

 

③気管カニューレの事故(自己)抜去

気管切開後、早期では最も気を付けなければいけない合併症です。抜去後数分以内に再挿入しないと、生死に関わります。体位変換の際など体を動かす際は十分な注意が必要です。

また、気管切開後1週間以内の時期は瘻孔が形成されておらず、再挿入が困難になるため、観察をしっかり行い、十分に注意する必要があります。

 

④反回神経麻痺

気管カニューレの留置による圧迫で反回神経麻痺がおこる可能性があります。

反回神経麻痺とは。

発声時には左右の声帯が中央方向に近寄って気道が狭まるので、呼気により声帯が振動して声が出ます。また嚥下(えんげ)時には、嚥下したものが気管に入り込まないように左右の声帯は強く接触して気道を完全に閉鎖します。反回神経麻痺によりこのような声帯の運動性が障害された結果、息もれするような声がれや、誤嚥(ごえん)、むせるといった症状が起こります。

また、両側の反回神経が障害されて左右の声帯が中央付近で麻痺して動かなくなると、気道が狭くなるため呼吸困難や喘鳴(ぜんめい)(ぜーぜーした呼吸音)が起こります。

 

⑤動脈損傷

気管の近くにある血管にカニューレが刺さってしまい、大出血する恐れがあります。これを防ぐためには、カニューレの位置やサイズ、方向に注意が必要になります。

 

⑥気管食道瘻

気管に穴が開いて食道まで貫通し、瘻孔が形成された状態のことをいいます。肺炎、呼吸困難などを伴います。気管内吸引時に血液や胃の内容物、食物残渣など、いつもと異なる物が吸引されていないか観察が必要になります。

 

⑦気管腕頭動脈瘻

気管食道瘻と同様に、瘻孔が形成された状態のことをいいます。失血死の確率が高いです。腕頭動脈が気管の前を斜めに走行しているため、カニューレ先端の接触やカフによる圧迫などで気管壁が損傷した場合に発生してしまいます。

症状が急激に悪化する場合も多いため、急変時の場合は、吸引時の血液混入の有無を確認する必要があります。

 

気管カニューレの交換時期は?

気管カニューレは衛生上、定期的に交換する必要があります。汚染具合や閉塞などにより時期はさまざまですが、一般的には2週間程度で交換します。交換は病院によりますが、医師が行うことも看護師が行うこともあるようです。

≪必要物品≫

・新しい気管カニューレ(使用中のサイズと1つ下のサイズ)
・キシロカインゼリー
・消毒薬
・Yガーゼ
・気管吸引セット
・アンビュー

交換前には、流れ込みを防止するために痰の吸引は必須です。

瘻孔が小さくなっていて挿入が難しい場合は無理せず、小さいサイズのものを挿入しましょう。ただ、その場合はリークがないか、呼吸状態に著変がないかの確認をしましょう。

 

事故(自己)抜去時の対応は?

気管切開後は、事故(自己)抜去のリスクを考え近くにカニューレ交換セット+下記のものを準備しておきましょう。

・新しい気管カニューレ(使用中のサイズと1つ下のサイズ)
・キシロカインゼリー
・消毒薬
・Yガーゼ
・気管吸引セット
・アンビュー
・バックバルブマスク
・生理食塩水20ml
・ガーゼ

①事故抜去した場合、呼吸状態に注意しながら、応援や医師を呼びましょう。
②ガーゼに生理食塩水を浸し、気管孔を塞ぎます。
③アンビューで口から用手的換気を行います。
④応援、医師が到着したらカニューレの再挿入を行います。

事故(自己)抜去は生死に関わる事例もあるので、知識と素早い対応が必要になります。

 

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まとめ

どこかしらで気管切開をしている患者さんを目にしたり、看護をする場合がでてくるでしょう。

しっかり内容を把握し、対応していくことが看護師として必要になってきます。人工呼吸器についても勉強しておきましょう。

 

 

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2件のコメントがあります

  1. はな

    事故抜去ではなく、自己抜去では?

    1. 管理人

      はなさん、コメントありがとうございます。この記事では管理側の問題で起こった抜去、事故抜去という言葉しか書きませんでしたが、確かに患者側が自分で抜いてしまう自己抜去もあるので、追記しておきました。ご指摘ありがとうございました。