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人工呼吸器(侵襲的陽圧換気/IPPV)の目的やモード、合併症について。

看護師として働いていく中で、人工呼吸器という言葉、機械って必ず耳にしますよね。ドラマなどでもよくみかけるものだと思います。今回はその人工呼吸器について詳しく説明していきたいと思います。

 

人工呼吸器って何?

人工呼吸器って何ですか?私たちがしている呼吸とは違うっていうことは分かるけど、詳しく知りたいです。

確かに今まで普通に生活していたら目にするものではないからね、最初はびっくりするし、とまどいもでるでしょう。

人工呼吸器は簡単に言えば、機械を使って呼吸をさせているという感じかしら・・・。

機械が呼吸をさせている・・・つまり人工呼吸器を使わなければ呼吸ができないってことですね?!

そうね。厳密にいえば、状況にもよるけど、たいてい呼吸がしづらい時に使われているものですね。

人工呼吸器を使用するという場合は何かしら呼吸機能、肺や器官に異常が起こっている時です。

なるほど。呼吸を助けるという意味で使われているんですね。

んーまあそうね。では、次はどういう目的で人工呼吸器が使われているか説明しますね。

ちなみに・・・
私たち普段がしている呼吸は自発呼吸といいます。

自発呼吸は、陰圧呼吸ともいい、呼吸をすると胸腔で圧が発生し、内側から外側に圧が引っ張られているイメージで呼吸をしています。

一方、人工呼吸器でも呼吸は陽圧呼吸といい、気道内で圧が発生し、外側から中に圧を押し込んでいるイメージで呼吸をさせています。陰圧と陽圧という大きな違いがあるんです。

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人工呼吸器の目的

1.換気量の改善

換気量(かんきりょう)とは、呼吸によって吸われるまたは吐き出される空気量のことを言います。慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息などを発病している場合は換気量が低下する場合があります。

その低下した換気量(低換気)を増やすために使用されます。また、高二酸化炭素血症の改善にも使われます。高二酸化炭素血症では低換気のため血液中に二酸化炭素が溜まってしまうので、呼吸器を使用し、低換気を改善することで、酸素量が増え、二酸化炭素量が減るといった仕組みです。

 

2.酸素化の改善

高濃度の酸素投与や呼気終末陽圧(PEEP)によって酸素化を改善させます。私たちが普段吸っている空気の酸素量は21%です。人工呼吸器では、100%まで酸素投与が可能です。

 

3.呼吸筋疲労の改善

人工呼吸器で呼吸を補助することによって、呼吸仕事量を軽減させます。

人工呼吸器を使用する目的には以上の3つの目的が挙げられます。

大きくくくれば、「呼吸を助ける」ということになりますが、細かくいうと、この3つに分かれるんですね。

どういった時に人工呼吸器は使われるの?

●神経系・呼吸筋の異常(神経筋疾患、全身麻酔など)
●気道抵抗の上昇(喘息発作、慢性閉塞性肺疾患=COPD急性増悪など)
●コンプライアンス(肺の柔らかさ、膨らみやすさ)低下時
●ガス交換不良(肺炎、心不全など)

呼吸器の病気や心臓の病気がきっかけで、呼吸不全になった場合や、脳の病気や薬物中毒などで意識障害をきたした場合などに主に使用されています。

 

人工呼吸器が使用される基準

●努力性呼吸=息がしんどそう(肩で息をしている、呼吸が荒いなど)
●呼吸回数が35回以上、6回未満
●酸素投与なしで、PaO2が50㎜Hg以下(酸素量が足りていない)
●酸素使用してPaO2が70mmHg以下
PaCO2が50mmHg以上(二酸化炭素が高い)

以上の症状がみられた場合は、医師に動脈血液ガスを測定してもらい、判断します。息があまりにも早い、もしくは遅い場合まずは何が原因なのかは把握する必要があります。

SPO2値も重要ですし、呼吸回数や痰の貯留がないのか、顔色はどうか、尿量が得られているかはとても重要です。

この時にSPO2が著名に低下しているのであれば、酸素投与が必要になりますが、酸素投与をすることでCO2ナルコーシスを引き起こしてしまう場合もあるので、十分に注意が必要です。

 

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人工呼吸器の種類は?

人工呼吸器には非侵襲的陽圧呼吸(NPPV)と侵襲的陽圧呼吸(IPPV)の2種類があります。よく、ドラマなでの見るものは侵襲的陽圧呼吸(IPPV)の方になります。まずは、こちらから見ていきましょう。

 

侵襲的陽圧呼吸(IPPV)とは?

侵襲的陽圧呼吸(IPPV)とは、口からチューブを入れた状態(挿管)、気管に穴を開け(気管切開)た状態で陽圧呼吸=人工呼吸器を使用することをいいます。

  • 長所

・確実に気道確保ができる
・気道内吸引が容易(痰が吸引しやすい)
・誤嚥(食物などが、なんらかの理由で、誤って喉頭と気管に入ってしまう状態)の可能性が低い
・呼吸・循環管理がしやすい

  • 短所

・気管内チューブ、吸引により苦痛が伴ってしまう
・場合によっては、鎮静剤(落ち着かせたり、眠らせる薬)が必要
・感染の可能性がある→気管内チューブ=異物=感染源になりやすい
・気道、口腔粘膜損傷の可能性がある
・コミュニケーションがしにくい(チューブが口に入っているので話せない)
・活動に制限がでてしまう

 

換気モードは?

人工呼吸器にはいくつかのモードがあり、患者の状態に応じてモードが選択されます。

 

自発換気モード(CPAP/SPONTモード)

自発呼吸にPEEPを加えたモードがCPAP/SPONTモードになります。

この自発換気モードは、吸気のタイミングや吸気時間、吸気流量、換気量、呼気のタイミングなど全て患者に合わせて作動します。

自発呼吸にはPSなどの機能を付けることもできます。

適応患者

●自発呼吸があることが大前提
●換気量は確保できているが、酸素化が不十分である
●酸素療法に反応しない低酸素血症(肺胞虚脱や肺水腫など)
●睡眠時無呼吸症候群(SAS)
●人工呼吸器からの離脱(ウィニング)の前段階

観察ポイント

自発呼吸がある症例が対象となるため

●一回換気量が十分か
●呼吸回数は正常値内か(無呼吸や頻呼吸はないか)
●自発呼吸と人工呼吸が同調しているか(トリガー設定が患者の状態に合っているか)

 

補助/調節換気モード(A/C, Assist Control)

補助/調節換気モードとは、設定された換気量もしくは圧、吸気フロー、吸気時間で換気を行う強制換気のみのモードです。

設定した換気回数を強制換気します。自発呼吸をトリガし、同調することも可能になっています。設定換気回数以上の自発呼吸がある場合、強制換気をします。

自発呼吸があれば補助呼吸(assist),なければ調節呼吸(control)を行い,すべての吸気に対して一定の1回換気量(VCVの場合)または一定の吸気圧と吸気時間(PCVの場合)が与えられます。

適切に設定していれば、最も患者の呼吸仕事量が少なくなるモードであるため、急性呼吸不全では有利に働くと考えられています。

適応患者

●強制換気メインになるため、自発呼吸がないか、もしくは非常に少ない場合
●術後麻酔や筋弛緩薬から十分に覚醒していない場合
●鎮痛鎮静薬の効果により自発呼吸が消失している場合
●心肺停止後など換気障害のある場合

観察のポイント

自発呼吸がない、もしくは弱い症例が対象となるため

●十分な換気量が得られているか
●呼吸回数の設定値と実測値に差がないか
→自発呼吸が少ない場合には設定換気回数を上げる、自発呼吸が多い時には自発呼吸を温存したモードへ変更する必要がある
●自発呼吸との同調性は良好か
●気道内圧、TV(一回換気量)、MV(分時換気量)、コンプライアンスの観察

 

SIMVモード(Synchronized intermittent mandatory ventilation:SIMV)

SIMVモードは強制換気と自発換気を組み合わせたモードです。強制換気が自発呼吸を邪魔しないようになっています。

設定換気回数を強制換気をしますが、自発呼吸をトリガーし、同調することも可能となっています。設定換気回数以上の自発呼吸がある場合、PSを付加することもできます。

ただ、2種類の換気様式が存在するため、患者はどちらの換気様式か予測できず、呼吸仕事量の軽減効果はそれほど期待できないです。

適応患者

●自発呼吸だけでは十分に換気ができない場合
●ウィニングの過程で使用

観察ポイント

A/C、SPONTを参照してください

A/CとSIMVの違いについて

自発呼吸がない場合は、設定された換気回数の強制換気をするため、同じ動作をすることになりますが、自発呼吸がある場合、A/Cはすべて同じ換気を行うのに対し、SIMVは強制換気は設定回数でそれ以上は、PSまたは自発呼吸となります。

 

ASV(Adaptive Support Ventilation:適応補助換気)

ハミルトンに搭載されているモードになります。このモードは、導入から離脱まで換気モードを変更せずに使用できます。

ASVは性別と身長の入力により得られる分時換気量を、患者さんの容態に適した一回換気量、呼吸回数でサポートします。

自発呼吸には自動的にプレッシャーサポートで対応し、自発呼吸優先の換気サポートをしてくれるモードなんです。

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人工呼吸器の合併症は?

人工呼吸器を使用するうえで忘れてはならないのが合併症です。合併症は2種類あります。

 

人工呼吸器関連肺炎(VAP)

人工呼吸器を装着して48時間以降に新たに発生した肺炎のことを指します。口腔内細菌や胃内容物の逆流などが原因で発生し、主な原因菌としては、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、腸内細菌などが挙げられます。

そのため予防が大事になってきます

●手指衛生を確実にする
●人工呼吸器の回路交換を頻回に行わない(機械によって交換頻度は違うので確認を)
●適切な鎮痛・鎮静をする
●人工呼吸器からの離脱ができるかを毎日評価する(ABCDEバンドルを使用)
●人工呼吸器使用中は、仰臥位で管理せず、ギャッジアップ(30~45度)する。
●口腔ケアと吸引をしっかり行う

観察項目

●痰の性状、量
●呼吸音
●咳嗽の有無
●呼吸困難感の有無
●発熱
●胸部レントゲン
●カフ圧の確認

 

人工呼吸器関連肺障害(VALI)

人工呼吸器によって引き起こされる肺障害のことを指します。

1.圧障害

高すぎる圧設定によって起こる肺損傷のこと。緊張性気胸や縦隔気腫などがあります。

2.容量損傷

多すぎる設定換気量によって肺胞の過伸展と、それに伴う肺毛細血管透過性の亢進が起こる肺損傷のこと。

肺水腫などが挙げられます。

3.無気肺損傷

虚脱と拡張の繰り返しによる肺障害のこと。肺実質や肺間質の損傷が挙げられます。

観察項目

●過呼吸になっていないか
●チアノーゼ、冷感の有無
●ショック症状
●胸郭運動の左右差
●呼吸音の減弱、消失
●SPO2の低下
●胸部レントゲン

 

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人工呼吸器使用(陽圧呼吸)による全身への影響

人工呼吸による陽圧呼吸は、強制的に空気を送り込む非生埋的な呼吸といえます。そのため、さまざまな合併症が生じやすくなってしまいます。

 

循環器系

陽圧呼吸が行われることにより、吸気時に胸腔内圧は陽圧になり、胸腔内圧が上昇して心臓や血管が圧迫されてしまい、心臓へ血液が流れにくくります。

そのため、静脈還流量は減少し、心拍出量低下、血圧低下を招きます。また、脳からの静脈還流量も阻害されるため、脳血流量が増加して脳圧が上昇してしまいます。頭蓋内庄亢進症状のある患者に人工呼吸を行うと重篤な神経系合併症をおこす可能性もでてきてしまいます。

 

呼吸器系

陽圧呼吸は横隔膜の動きが乏しくなってしまい、背側の肺は臓器に圧迫されて空気が入りにくくなってしまいます。人工呼吸は仰臥位で行うことが多いので、下になる肺は重力の影響を受けやすく、肺胞が虚脱し無気肺になりやすくなります。

高い気道内圧や、1回換気量やPEEP(呼気終末陽圧)によって肺組織自体が損傷を受け、皮下気腫、肺胞破裂、緊張性気胸などが生じることもあります。

 

肝臓

胸腔内圧の上昇や、静脈還流量の減少は、肝静脈血が流れにくくなり、肝臓はうっ血をきたしうっ血肝となります。

心拍出量が減少すると、交感神経は緊張するので、それにより腹腔ない血管が収縮したり、横隔膜が圧迫されることにより、腹腔内圧が上昇し肝臓が圧迫されます。肝臓が圧迫されると、肝静脈・門脈系の血流が減少し、肝機能障害を引き起こしてしまいます。

 

水・電解質

静脈還流量の減少による心拍出量の減少から抗利尿ホルモン(ADH)分泌が亢進することや、腎血流量減少やレニンアンギオテンシン系の活性化などから体液が貯留しやすくなります。

 

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まとめ

人工呼吸器って覚えることも多いし、ボタンもいっぱいあるし、装着している患者さんを見るのに「怖い」っていう感情を持ってしまいますよね。しかし、きっちり知識を持ち正しく扱えることができれば怖くありません。

今回は人工呼吸器(IPPV)についてでしたが、ほかにも人工呼吸器からの離脱についてやNPPVについてもまとめていますので、是非ご覧ください。

 

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